地震は、地球表面の地殻の内部で

固く密着している岩盤同士が、断層と呼ばれる破壊面を境目にして、急激にずれ動くこと。これによって地震動と呼ばれる大きな地面の振動が引き起こされ、一般的にはこちらも「地震」と呼ぶ。地質現象(地質活動)の一種。地震に対して、地殻が非常にゆっくりとずれ動く現象を地殻変動と呼ぶ。地震を対象とした学問を地震学という。地震学は地球物理学の一分野であり、構造地質学とも密接に関わっている。地震は、断層と呼ばれる地下の岩盤のずれが生じることで発生する。断層のずれによって生じた振動は、地面を媒質とした波(地震波)となって地中を伝わり、人間が生活している地表でも振動(地震動)が引き起こされる。 断層はふつう、地下数km〜数十kmの深さにあり、地震によって生じた伸縮の歪みは地下で完結し、地表までは達しないことが多い。しかし、大きな地震の時には地表地震断層とよばれる段差が地表にも現れることがある。地下で断層が動いた時、最初に動いた地点(地震波の発生源)を震源と呼び、地上における震源の真上の地点を震央と呼ぶ。 テレビや新聞などで一般的に使用される震源図は震央の位置を示している。一度の地震では、震源だけではなく震源の周囲数m〜数百kmの地盤で ずれが発生する。このずれの範囲を震源域と呼ぶ。

地震波には、地中を伝わる「実体波」(P波・S波)と、地表を伝わる「表面波」(レイリー波・ラブ波)がある。被害を引き起こすような揺れのもとは主にS波である。P波とS波は伝搬速度が異なるので、これを応用して震央距離を求めることができ、3以上の観測点があれば震源の深さと距離も求めることができる。この式は大森房吉が1899年に発表したので、「震源の大森公式」と呼ばれている。
ある程度の規模を超える地震は、地震活動に時間的・空間的なまとまりがあり、その中で最も規模が大きな地震を本震と呼ぶ。ただし、本震の区別が容易でない地震もあり、断層のずれの程度や前後に起こる地震の経過、断層の過去の活動などを考慮して判断される。他に前震・余震を伴うことがある。本震の前に起こるものが前震、後に起こるものが余震である。被害をもたらすような大地震ではほぼ例外なく余震が発生し、余震により被害が拡大する例も多い。余震の発生する範囲は、震源域とほぼ重なる。また傾向として、規模が大きな地震であるほど、本震の後に起こる余震の回数・規模が大きくなる。この余震の経過を示す法則には、「余震の大森公式」を改良したものがある。

地震の大きさを表現する指標は主に2つある。マグニチュード (M) は地震が持つエネルギーの量を表す指標で、震度階級(日本では震度)は地表の各地点での揺れ(地震動)の大きさを表す指標である。Mは地震ごとに毎回1つの値が出るが、震度は観測点ごとに出るため毎回多数出る。「震度○の地震」という場合の震度は、その地震により各地で観測されたものの中で最大の震度のことである。
大きな地震はしばしば建造物を破壊して家財を散乱させ、火災、土砂災害などを引き起こす。典型的な自然災害の1つである。気象災害や噴火等と異なり科学的な予報・予知が確立されておらず、前触れもなく突然やってくるので、建造物の強度を増したり震災時の生活物資を備蓄したりすることで「いつ来てもいいように」備えるのが一般的である。また、海域で発生する大規模な地震津波を発生させ、震源から離れたところにも災害をもたらすことがある。そのため、学術的な研究目的に加えて、津波の発生を速報する目的で、各国の行政機関や大学等によって地震の発生状況が日々監視されている。2004年のスマトラ島沖地震以降は、津波の警報態勢も大きく強化されている。

どの地殻構造で起こるかにより地震は3種類に分けられる(後述)。また、断層のずれる方向や向きなどのパターン、空間的なまとまり、時間的なまとまりからも、地震は特徴付けられる。被害をもたらすような大きな地震の多くは、既に存在する断層が数十万年から数十年に1回の活動周期を迎えた時に発生する、周期的な固有地震であると考えられている(固有地震説)。
地球の表層はプレートと呼ばれる硬い板のような岩盤でできており、そのプレートは移動し、プレート同士で押し合いを続けている。そのため、プレート内部やプレート間の境界部には、力が加わり歪みが蓄積している。これら岩盤内では、岩盤の密度が低くもろい、温度(粘性)が高い、大きな摩擦力が掛かっているなどの理由で歪みが溜まりやすい部分がある。ここで応力が局所的に高まり、岩体(岩盤)の剪断破壊強度を超えて、断層が生じあるいは既存の断層が動くことが地震であると考えられている。断層はいわば過去の地震で生じた古傷であり、地殻に対する応力が集中しやすいことから、断層では繰り返し同じような周期(再来間隔)で地震が発生する。断層の大きさは数百mから数千kmまであり、またその断層の再来間隔も数年〜数十万年とさまざまである。断層の中でも、数億年〜数百万年前まで動いていて現在は動いていないような断層があり、そのようなものは古断層といって地震を起こさない。一方、現在も動いている断層を活断層という。日本だけでも約2,000の活断層がある[2]。ただし、活動の有無を判別するのが難しい断層もあり、古断層といわれていた断層が動いて地震を起こした例もあるため、防災上注意しなければならない。

岩盤内で蓄積される応力は、押し合う力だけではなく、引っ張り合う力や、すれ違う力など様々な向きのものが存在し、それによって断層のずれる方向が変わる。押し合う応力は断層面の上側が盛り上がる逆断層、引っ張り合う応力は断層面の下側が盛り上がる正断層、すれ違う応力はほぼ垂直な断層面の両側が互い違いに動く横ずれ断層を形成する。

岩盤内部の一点から破壊が始まり

急激に岩盤がずれて歪みを解放し始めることである。破壊が始まった一点が震源であり、破壊されてずれた部分が断層となる。このずれた部分は、地震波を解析する段階では便宜的に平面(断層面または破壊面と呼ぶ)と仮定し、断層面の向き(走向)や断層面の鉛直方向に対する角度(傾斜)、震源の位置、地震の規模などを推定する。震源断層が曲がったり複数あったりする場合は、後の解析や余震の解析により推定される。震源で始まった岩盤の破壊範囲は、多くの場合秒速2〜3kmで拡大し、破壊された岩盤は、速いときで秒速数mでずれを拡大させていく。
1923年大正関東地震では神奈川県小田原直下付近から破壊が始まり、破壊は放射状に伝播して40〜50秒で房総半島の端にまで至り、長さ130km、幅70kmの断層面を形成し、小田原市秦野市の地下と三浦半島の地下で特に大きなずれを生じ、約8秒で7〜8mずれた。

1995年兵庫県南部地震では、明石海峡の地下17kmで始まった破壊は、北東の神戸市の地下から、南西の淡路島中部にまで拡大し、約13秒で長さ40km幅10kmの断層面を形成した。
このようにして破壊が終結すると、一つの地震が終わることになる。この断層面の広さとずれの大きさは、地震の規模と関連している。多くの場合、断層面が広くずれが大きくなれば大地震となり、逆に小さな地震では破壊は小規模である。こうして一つの地震終結しても、大地震の場合は断層面にはまだ破壊されずに残っていて、歪みをため込んでいる部分がある。それらの岩盤も、余震とよばれるやや小さめの地震によって次第に破壊が進む。これに対して初めの大地震を本震という。本震の前に発生する前震もあり、そのメカニズムについては本震を誘発するものだという説、本震に先駆けて起こる小規模な破壊だという説などがあるが、はっきりと解明されていない。本震の後に余震が多数発生する「本震 - 余震型」や、それに加えて前震も発生する「前震 - 本震 - 余震型」の場合は、応力が一気に増加することで発生すると考えられている。一方で群発地震の場合は、応力が比較的緩やかなスピードで増加することで地震が多数発生すると考えられている。

ふつう、地震の規模を表す指標としては、エネルギー量を示すマグニチュードを用い、「M」と表記する。マグニチュードには算定方法によっていくつかの種類があり、地震学では各種のマグニチュードを区別するために「M」に続けて区別の記号を付ける。地震学ではモーメント・マグニチュード (Mw) が広く使われる。日本では気象庁マグニチュード(Mj)が広く使われる。他にもそれぞれの観測機関によって使用されるマグニチュードのタイプが異なる場合もあるが、その値は差異ができるだけ小さくなるように定められている。これらは最初にマグニチュードを定義したチャールズ・リクターのものの改良版であり、基本的に地震動の最大振幅を基礎とする。モーメント・マグニチュードを除きいずれも8.5程度以上の巨大地震・超巨大地震ではその値が頭打ち傾向を持つ。この弱点を改善するために、地震学では地震モーメントから算出されるモーメント・マグニチュード (Mw) と呼ばれる値が地震の規模を表す指標として用いられることが多く、これを単に「M」と表記することも多い(アメリカ地質調査所(USGS)等)。

日本では、気象庁が独自の定義による気象庁マグニチュードを発表しており、「Mj」と記され、日本ではこれを単に「M」と表記することも多い。これに対し、多くの国では表面波マグニチュード (Ms) や実体波マグニチュード (mb) のことを、単にマグニチュードと呼ぶことが多い。Mが1大きくなるとエネルギーは約32倍、2大きくなるとちょうど1000倍となる。人類の観測史上最も大きな地震、つまりマグニチュードが最も大きかったのは、1960年のチリ地震 (Ms8.5 / Mw9.5) である。地震動の大きさを表す数値として、速度や加速度、変位などがある。建築物や土木構造物の耐震設計の分野では応答スペクトルやSI値という指標も、地震動の大きさを表す方法として広く用いられている。一般的には、被害の大きさなどを考慮して、地震動の大きさを客観的に段階付けた震度という指標が用いられる。震度については、日本では気象庁震度階級(通称「震度」)、アメリカ合衆国では改正メルカリ震度階級、ヨーロッパではヨーロッパ震度階級(EMS)、CIS諸国やイスラエル、インドなどではMSK震度階級が現在使用されているほか、ほかにもいくつかの指標がある。

地震の規模が大きいほど震度は大きくなる傾向にあるが、震源域からの距離や断層のずれの方向、断層の破壊伝播速度、地盤の構造や性質、地震波の特性などによって地上の揺れは大きく異なる。一般的に、堆積平野(沖積平野など)では揺れが増幅される。また、俗に「キラーパルス」とも呼ばれる周期が0.5秒〜2秒程度の地震波が大きな振幅で継続すると、一般家屋を含む低層建築物の被害が大きくなる傾向にある。通常の地震は、既存の断層が動くこと、あるいは新たに断層が生じることが原因で起こる。地震の際に動く断層は1つとは限らず、大きな地震では震源に近い別の断層(共役断層)が同時に動くこともある。火山活動に伴う地震火山性地震と呼ぶが、これには断層と関係が無いものも多く、通常の地震とは分けて考えることが多い。

大きく3種類に分けられる。

後に、節ごとに詳しく説明する。呼び方はそれぞれ複数ある。プレート同士の境界部分で発生する地震(「プレート間地震」、「プレート境界型地震」、「海溝型地震」) 海溝型地震、衝突型境界で起こる地震、発散型境界で起こる地震トランスフォーム断層で起こる地震の4つに細分される。大陸プレートの内部や表層部で発生する地震(「内陸地殻内地震」、「大陸プレート内地震」、「断層型地震」)海洋プレートで発生する地震(「海洋プレート内地震」、「スラブ内地震」、「プレート内地震」)沈み込む海洋プレート内地震、沈み込んだ海洋プレート内地震(深発地震)の2つに細分される。プレート間地震の対軸として、内陸地殻内地震と海洋プレート内地震をひっくるめてプレート内地震という1つの大分類に当てはめることもある。火山性地震を含めて4種類とする場合もある。

火山体周辺における断層破壊によって生じP波とS波が明瞭なA型地震、P波とS波が不明瞭で紡錘型の波形を生じるB型地震に大別される。人工的な発破の振動などにより発生する人工地震も存在する。これに対して、自然に発生する地震を自然地震と呼ぶことがある。地震を防災上の観点から分類した場合、直下型地震(内陸地震)、海洋型地震などに分けられる。直下型地震のうち、南関東直下地震などの都市直下型地震は防災上特に重要視されている。また、震度が小さい割に大きな津波が起こる地震津波地震といい、1896年の明治三陸地震(M8.2、最大震度2〜3)などが例に挙げられる。深発地震は深さによる分類、群発地震地震の継続パターンによる分類である。逆断層型、正断層型、横ずれ断層型といった分類は、断層型地震内陸地殻内地震)にのみ適用される考え方ではなく、ほとんどすべての地震に適用される。これは、地震の際にずれ動く面は上記の分類に関係なく「断層」と呼ぶためである。海溝型地震は逆断層型、海嶺などで起こる地震は正断層型が多い。内陸地殻内地震は地下の応力場によってさまざまなタイプがみられる。

2つ以上のプレートが接する場所では、プレート同士のせめぎ合いによって地震が発生する。このようなタイプの地震をプレート間地震あるいはプレート境界型地震と呼ぶ。海溝で起こるものが多いため海溝型地震とも呼ばれるが、後述の通り海溝で起こらないものも多数ある。プレート同士の境界は、収束型(海溝と衝突型境界に細分される)、発散型、すれ違い型(トランスフォーム断層)の3種類に分けられる。発散型やすれ違い型は、地震が起こる範囲がプレート境界の周辺だけに限られ、震源の深さもあまり深くない。一方、収束型のうち海溝はしばしば規模の大きな地震を発生させ、衝突型は地震が起こる範囲が広く震源が深いことも多い。海溝やトラフでは、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込み、両者の境界が応力により歪みを受け、ばねのように弾性力を蓄え、やがてそれが跳ね返る時に地震が起こると考えられている。これは海溝型地震と呼ばれているが、1923年の関東地震や想定される南関東直下地震のように、海溝から離れた深いところにまで震源域は広がっている。跳ね返りで発生するといっても、実際は2つの地盤の面がずれる断層運動によって起こるものである。

海溝型地震は、海溝よりも大陸プレート寄りの部分で発生する。1つの細長い海溝の中では、いくつかの領域に分かれて別々に大地震が発生する。地震の規模はM7〜8と大きく、稀に複数の領域が同時に動いてM9を超える超巨大地震が発生することもある。1つの領域では、およそ数十〜数百年ほどの周期で大地震が繰り返し発生する。規模が大きい海溝型地震が海洋の下で発生した場合、津波が発生することがある。震源断層は海洋プレートと大陸プレートの境界そのものである。震源域が広く規模が大きいため、被害が広範囲にわたることがある。発生しやすい場所は、チリ、ペルー、メキシコ、アメリカのアラスカ、アリューシャン列島や千島列島、日本、フィリピン、インドネシアパプアニューギニアソロモン諸島、フィジー、トンガ、ニュージーランドなどの沖合いや海岸付近である。いずれも沿岸に海溝があり、大きな海溝型地震が発生する。

例として、スマトラ島沖地震 (2004年)や

日本付近では2003年9月に発生した十勝沖地震(Mw8.3、最大震度6弱)や、近い将来の発生が指摘されている東海地震が例として挙げられ、東南海・南海沖の南海トラフ宮城県沖や三陸沖の日本海溝根室沖などの千島海溝でも発生する。関東大震災の原因となった関東地震(M7.9)は、震央は陸上だが相模トラフがずれ動いた地震であり、海溝型地震に含まれる。衝突型境界では、プレート同士が激しく衝突し合い、境界部分では強い圧縮の力が働いて地震が発生する。強い力によってプレートが砕け、その破片同士がずれたり、付加体がずれたりして地震が起こる。大陸プレート同士が押し合い衝突しているヒマラヤ山脈パミール高原チベット高原日本海東縁部などが主な発生地である。日本付近での例は、日本海東縁変動帯域を震源とする地震で、1983年5月の日本海中部地震(M7.7、最大震度5)、1993年7月の北海道南西沖地震(M7.8、最大震度6)などが例である。

発散型境界でも、マグマの上昇やプレートの軋みなどによって地震が発生する。主に、海洋中央部の海嶺で発生し、地震の規模はそれほど大きくない。東太平洋海嶺、オーストラリア南極海嶺、中央インド洋海嶺、南西インド洋海嶺、大西洋中央海嶺など各地の海嶺で地震が発生する。アイスランドやアフリカの大地溝帯では、陸上にある海嶺(地溝)の影響で正断層型の地震が発生する。トランスフォーム断層では、プレートのすれ違いによって地震が発生する。断層のタイプは横ずれ断層型となる。主な発生地には、トルコの北アナトリア断層やアメリカ西海岸のサンアンドレアス断層などがある。発生例としては、1906年4月のサンフランシスコ地震(M7.8)などが挙げられる。海洋プレートが沈み込んでいる大陸プレートの端の部分では、海溝から数百km離れた部分まで含む広い範囲に海洋プレートの押す力が及ぶ。その力はプレートの内部や表層部にも現れるため、プレートの表層部ではあちこちでひび割れができる。このひび割れが断層である。

周囲から押されている断層では、押された力を上下に逃がす形で山が高く、谷が深くなるように岩盤が動く(逆断層)。また、大陸プレートの一部分では、火山活動によってマグマがプレート内を上昇し、プレートを押し広げているような部分がある。また、周囲から引っ張られている断層でも、引っ張られた力を上下に逃がす形で山が高く、谷が深くなるように岩盤が動く(正断層)。また、押される断層・引っ張られる断層であっても、場所によっては断層が水平にずれ、岩盤が上下に動かないこともある(横ずれ断層)。多くの断層は、正断層型・逆断層型のずれ方と、横ずれ断層型のずれ方のどちらかがメインとなり、もう一方のずれ方も多少合わさった形となる。このようなタイプの地震内陸地殻内地震あるいは大陸プレート内地震と呼ぶ。伊豆半島ニュージーランドなどは海洋プレート上に位置しているが、これらの場所で起こる内陸地殻内の地震もこのタイプの地震として扱われることがある。このタイプの地震では地表に断層が出現しやすいため、断層型地震活断層地震などとも呼ぶが、プレート間・大陸プレート内・海洋プレート内地震は全て断層で発生することに注意する必要がある。内陸の断層は都市の直下や周辺にあることも少なくなく、直下型地震とも呼ぶが、関東地震のように陸地の直下を震源とする海溝型地震もあるため、それと区別する意味で「陸域の浅い場所を震源とする地震」のような言い方もされる。

地震の規模は活断層の大きさによるが、多くの断層はM6〜7、大きいものではM8に達する。海溝型地震と同じように、長い断層はいくつかの領域に分かれ、別々に活動する。同一の活断層での大きな地震の発生は、数百年から数十万年に1回の頻度とされている。都市の直下で発生すると甚大な被害をもたらすことがあるが、大きな揺れに見舞われる範囲は海溝型地震と比べると狭い領域に限られる。1976年7月の唐山地震(M7.8)、1995年1月の兵庫県南部地震(M7.3、最大震度7)や2000年10月の鳥取県西部地震(M7.3、最大震度6強)、2004年10月の新潟県中越地震(M6.8、最大震度7)や2007年3月の能登半島地震(M6.9、最大震度6強)、新しいものでは2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震(M7.2、最大震度6強)や2010年1月のハイチ地震(Mw7.0)などが該当する。アメリカ西海岸、ニュージーランド、日本、中国、台湾、フィリピン、インドネシアアフガニスタン、イラン、トルコ、ギリシャ、イタリア、スイスなどに活断層が密集しており、大きな断層型地震が頻発する。

このタイプの地震はしばしば甚大な被害をもたらすため、将来の地震発生予測を目的に、1980年以後日本全土の活断層が調査され、危険な断層を順次評価している。兵庫県南部地震の前に公表された活断層の地図には他の大断層類と同時に「危ない断層」として有馬・高槻・六甲断層帯が危険と表示されていた。この調査作業は2009年現在も継続して続けられている。一方、ヨーロッパ中部・北部、アメリカ中部、オーストラリアなどには、過去の造山運動に伴ってできた断層があるが、その中には現在も動いている活断層がある。このような断層は、時々動いて最大でM4〜5程度の地震を起こし、稀に被害が出ることもある。また、そのような地域でもニューマドリッド断層帯のように活断層が存在し、頻繁に活動している場合がある。

このようなタイプの地震を

海洋プレート内地震あるいはプレート内地震と呼ぶ。単にプレート内地震と呼ぶときはほとんどの場合このタイプを指し、大陸プレート内地震は含まれない。海溝を経て大陸プレートの下にもぐりこんだ海洋プレートは、マントルの中を沈み込んでいる途中で割れたり、地下深部でスタグナントスラブとなって大きく反り返って割れたりして、地震を発生させることがある。スラブ(板=プレート)の中で発生するので、スラブ内地震と呼ばれる。震源が深いことから深発地震とも呼ばれる。一般に震源が深く、したがって震源と震央の距離は長い場合が多いにもかかわらず、規模が大きなものは被害としては侮れない。また深い分、広範で最大震度に近い揺れに見舞われることにもなる。地震波の伝わりやすさは、プレートの位置関係やマントルの深さなどでそれぞれ異なるため、震源から離れた場所で揺れが大きくなる異常震域が発生しやすいのも特徴である。20世紀末以降の例では、1987年の千葉県東方沖地震(M=6.7、深さ50km、最大震度5:千葉県全域)、1992年2月の浦賀水道地震(M=5.7、深さ92km、最大震度5)、1993年1月の釧路沖地震(M=7.5、深さ101km、最大震度6)や2003年5月の宮城県沖の地震(M=7.1、深さ72km、最大震度6弱、広範で5弱以上…山形県村山市でも計測震度4.8を記録、建物被害あり)のような被害事例が見られる(注:2003年9月17日に気象庁によってマグニチュード算出方法が改訂されたが、これにより過去の地震も修正された。ここではそのマグニチュードを用いている)。

福島県沖や茨城県沖で頻繁に発生する地震のほか、2001年3月の芸予地震もこのタイプである。海溝を経て大陸プレートの下に潜り込む海洋プレートでは、まだ沈み込んでいない部分(海溝やトラフよりも沖合い)が反る場合がある(アウターライズ)。この部分に力がかかり、ずれたり割れたりして地震を発生させることがある。こちらもスラブ内地震と呼ぶことがある。一般に反り返った先のもっとも高い(浅い)場所が張力を受けて破壊される正断層型の地震が多い。昭和三陸地震や2007年1月13日に千島列島で発生した地震のようにM8を超える地震がしばしば発生し、海溝型地震に匹敵する津波災害を引き起こすことがある。海溝の周辺の火山弧、ホットスポット、海嶺、ホットプリュームの噴出地域では、マグマの移動や熱せられた水蒸気の圧力、火山活動に伴う地面の隆起や沈降が原因となって地震が発生する。これらの地震火山性地震という。火山性地震は断層の動きだけでは説明できない部分があるので、上記の3分類とは分けて考えることが多い。地震動も上記の地震とは異なる場合がある。火山性地震地震動の性質から2つのタイプに分けられる。P波とS波が明瞭で、一般的な断層破壊による地震と大差がないA型地震、および紡錘型の波形を持つB型地震である。B型地震はさらに周期の違いによってBL型地震とBH型地震に分けられる。広義では火山性微動地震に含む。

また、火道の圧縮やマグマの爆発・爆縮によって、一般的な断層破壊では見られない特殊な発震機構(メカニズム)を持つ地震も起こりうる。超高層建築物・ダムの建設や地面の掘削・造成、石炭・石油や天然ガスなどの採掘が地下構造を変え、地震を誘発することがある。1940年にアメリカフーバーダムで起きたM5の地震や、1967年12月10日にインドのマハラシュトラ州西部で起きたM6.3の地震は、貯水池の建設や貯まった水の水圧によって誘発されたものだった。地中に電流を流すことで地震が誘発されると言う実験結果がある。ソビエト連邦キルギス天山山脈で、2.8kAの電流を百回以上地下に流し込む実験を行ったところ、約2日後から地震が増え、数日のうちに収まるという現象が起こった。 水分やガスといった流体が地中に注入されることで地震が誘発されることがある。ロッキー山脈のアメリカ軍の兵器工場で、1962年3月から深さ3670メートルの地下に放射性の廃水を廃棄し始めたところ、1882年以来80年間も地震が全くなかった場所に地震が発生し始めた。また、注入量や圧力に比例するように地震の数が増減した[9]。また、2007年12月にスイスのバーゼル地熱発電に利用する蒸気を発生させるために地下5000メートルの花崗岩層に熱水を注入したところ、最大M3.4の地震が2度発生した。この地域では以前から有感地震が発生していた。同様に、鉱山内のガス流体の地震の誘発作用も示唆されている。また自然界でも、同様の現象が発生している(後述)。

爆弾などの爆発によって起きる地震。土木工事などに使われる発破は地震波を発生させるため、しばしば自然地震と誤認される。ただし地震波には、P波に比べてS波が小さい、表面波が卓越する、すべての観測点で押し波となるなどの特徴があり、自然地震との判別は可能である。核爆発は代表的な人工地震のひとつであり、1961年10月30日にロシアのノヴァヤゼムリャで行われた核実験(ツァーリ・ボンバ参照)では、M7に相当する揺れが発生した。また、人工地震を観測することで地下構造の推定に役立てる手法もある。断層運動や火山活動に起因する自然地震に比べて地震波形が単純であるため、地震波トモグラフィーなどに生かしやすいとされる。 また、氷河の運動によっても、自然地震に似た発振現象(氷震)が発生している。

徐々に明らかになっているが

地盤や岩盤に溜まった応力の解放を促している引き金が何であるかはほとんどが謎のままになっていて、はっきりとした特定はなされておらず、様々な説が展開されている。この引き金に関しては、相関性の比較により統計学的に相関を見出すことは可能であるが、それが因果関係であるかを同定するのは地震学的な研究に頼るもので、分野が少し異なる。兵庫県南部地震フィリピン海プレートから生じた水によって誘発されたという説がある。また東北大学によれば、新潟中越沖地震や、岩手・宮城内陸地震など複数の地震は断層直下のマグマが冷えたことで発生した水分が潤滑油の役割を果たし地震を発生させたとしている。7つの火山島からなるアゾレス諸島では、雨が降ると2日後に小さな地震が起こったり、鉱山の水没域では、雨水が流れ込み地震が誘発されることがあったりする。太陽や月との潮汐が発生の引き金になるとの指摘もある。満月と新月時に強まった潮汐力が地震を誘発する可能性が指摘されており、防災科学技術研究所は、スマトラ島沖では2004年の地震の8年前から潮汐力が強まった時間帯に地震が集中していたため、歪みが溜まっている地域では潮汐力が地震の引き金になっている可能性が高いとしている。

遠く離れた場所で発生した地震が時間をおいて別の地震を誘発する可能性が指摘されている。日本では古来より「地中深くに大ナマズが存在し、その大ナマズが暴れることにより大地震が起きる」という俗説が信じられていた。その為なのか、一部の人々には今でもナマズが暴れると大地震が来ると信じられている。だが、ナマズ地震を予知できる根拠は見つかっていない。江戸時代には安政の大地震を期に鯰絵と呼ばれる錦絵が流行するなど、日本人にとって地震ナマズが身近な関係にあったことが伺える。また、鹿島神宮にはこの大ナマズを抑えるという要石があり、地震の守り神として信仰されている。地震避けの呪歌に、万葉集の歌を使った「ゆるぐともよもや抜けじの要石鹿島の神のあらむ限りは」(要石は動きはしても、まさか抜ける事はないだろう、武甕槌神がいる限りは)というものがある。北海道のアイヌ民族には、「地下には巨大なアメマスが住んでいる。これが暴れて地震が起きる」という、日本とよく似た伝承があった。そこで地震が発生すれば、地震鎮めの呪いとして囲炉裏の灰に小刀や火箸を刺し、アメマスを押さえつけるまねごとをした。

中国では古来から、陰陽説の考え方を背景にして、地震とは陰の性質を持った大地から陽の性質を持った大気が出てくるときに起こるものという説明があった。また福建省では、地震を起こすのはネズミであると言う神話上の伝承が存在する。北欧神話においては地底に幽閉されたロキが、頭上から降り注ぐ蛇の毒液を浴びたときに震えて地震が起きるとされている(詳細はロキを参照のこと)。ギリシア神話ではポセイドンが地震の神とされた。古代ギリシアでは、自然哲学者アナクシメネスが土が大地の窪みにずり落ちることが原因だと考えた。アナクサゴラスは地下で激しく水が流れ落ちることを原因と考えた。その後、アリストテレス四元素説を基に、地震は地中から蒸気のようなプネウマ(気、空気)が噴出することで起こると説明した。これらを受けて、セネカは地下での蒸気の噴出によって空洞ができ、そこの地面が陥没するときに地震が起こるという説を立てた。時は変わって、アラビアではイブン=スィーナーが、地面が隆起することが原因だとする考えを示した。

18世紀には、リスボン地震をきっかけにジョン・ミッチェルが地震の研究を行い、火山の影響で地中の水蒸気が変化を起こすことが原因という説を発表した。19世紀末には、お雇い外国人として日本にいたジョン・ミルンやジェームス・アルフレッド・ユーイングが地震を体験したことがきっかけとなり、日本地震学会が設立され、地震計の開発や地震の研究が進み始めた。地震の波形から震源を推定する方法が発見されたり、アンドリア・モホロビチッチがモホロビチッチ不連続面を発見して地球の内部構造の解明の足がかりとなったりした。ミルンは、イギリスで地震の研究を進めて同国に近代地震学が確立された。現在イギリスには世界中の地震の観測情報を集積している国際地震センター (ISC) が設置されている。また20世紀に入って、リチャード・ディクソン・オールダムが地球の核(コア)を発見、ベノー・グーテンベルググーテンベルク不連続面を発見するなどし、地球物理学が次第に進展するとともに、アルフレート・ヴェーゲナー大陸移動説から発展したマントル対流説や海洋底拡大説がプレートテクトニクスにまとめられ、地震の原因として断層地震説と弾性反発説が定着した。
ただ、断層地震説と弾性反発説によって一度否定された岩漿貫入などは、2説を補完する説として考える学者もいる。また、地球空洞説に原因を求めるなど、これらとはまったく異なる説を展開する学者や思想も、少数ながら存在している。

地表では、P波による揺れが始まってからS波が到達するまでは、初期微動と呼ばれる比較的小さい揺れに見舞われる。その後、S波が到達した後は主要動と呼ばれる比較的大きい揺れとなる。ほとんどの場合、S波のほうが揺れが大きくなるとされるが、揺れの大きいP波によって被害が出ることもあるほか、震源が近くにある場合はP波とS波がほぼ同時に到達することもある。また震源から近い場所では、P波が到達する前後にレイリー波も到達し、同じく揺れを引き起こす。S波は液体中を伝播しないため、海上の船などでは、P波のみによって発生する海震と呼ばれる揺れに見舞われる。

主にS波だが、レイリー波、ラブ波、P波も

振幅や周期によっては被害を引き起こすような揺れとなる。地震波/地震動の周期が、被害を受ける構造物(あるいは構造物の固有振動)と関係していることは、地震工学や建築工学においては重要であり広く知られているが、一般的な知識としてはあまり浸透していない。構造計算においては、さまざまな固有振動周期や減衰定数をもつ構造物の応答スペクトルを解析して、地震動に対する構造物の特性をみる。例えば、日本家屋のような木造住宅は周期1秒前後の短周期地震動が固有振動周期にあたるため、周期1秒前後の地震動によって共振が発生し非常に強く建物が揺さぶられ、壊れやすく被害が拡大しやすい。一方、高層建築物は周期5秒以上の長周期地震動が固有振動であり、地震波が堆積平野を伝わる過程で発生しやすい長周期地震動によって、平野部の高層建築物の高層階では大きな被害が発生する。このほかに、M9を超えるような巨大地震の際に観測される、超長周期地震動または地球の自由振動と呼ばれる周期数百秒以上の地震動がある。この超長周期地震動の中には地球の固有振動周期に当たる地震動もあり、地球全体が非常に長い周期で揺れることもある。

地下の構造、特に地面に近い表層地盤の構造や地下のプレートの構造によって、地震動全般に対する揺れやすさ、揺れやすい周期、あるいは地震波の伝わり方が異なる。そのため地震の際、震度が震央からの距離に完全に比例して、きれいに同心円状に分布することはほぼない。稀に震央と異なる地域で揺れが最も大きくなることがあり、異常震域と呼ばれる。また、多くの地震計は周期0.2〜0.3秒前後の地震動を感知しやすいため、周期0.2〜0.3秒で大きく周期1秒で小さい地震では震度に比べて被害が軽かったり、逆に、周期0.2〜0.3秒で小さく周期1秒で大きい地震では震度に比べて被害が甚大だったりといったことが起こる。ただし、これには地震計の設置場所と地下構造の問題もあるとされる。地震の揺れの速度を表す単位として、カイン(=センチメートル毎秒)がある。また、地震の揺れによる加速度を表す単位として、ガル(センチメートル毎秒毎秒)がある。1秒間に1カインの加速度が1ガルである。

地震動や地震波は地震計により観測される。揺れの周期や感度、振幅などにあわせてさまざまな種類のものがある。震度を算出したり、観測データを集めて震源の位置や規模などを推定したりする。
主な地震震源を地図にして地球の表面を概観すると、プレートテクトニクスの考え方でいう環太平洋造山帯アルプス・ヒマラヤ造山帯の周辺は地震が特に多い地域があることが分かる。前述の2つの造山帯も含めた新期造山帯で最も地震が多く世界の地震活動の大部分を占める。このほか、ヨーロッパ西部やアジア北部などの古期造山帯でも比較的多く地震が発生する。これらの地域は造山帯または地震帯(火山に着目した場合火山帯とも呼ぶ)と呼ばれ、地殻や地面の活動(移動)が活発で、地震も活発である。しかし、この地図はあくまで一定期間に発生した地震を集計したものであり、「地震の起こりやすさ」を表したものである。この地図で地震が少ない地域でも、絶対に地震が発生しないわけではない。

地震による(人間への)被害が大きくなる地域は、地震の多い地域とは異なる。周囲の断層の多さ、地盤の揺れやすさ、人口密度の大小、建造物の強度などによって被害が異なるためである。大地震が起きても人のあまり住んでいない所で起きれば被害も少ないが(鳥取県西部地震など)、大都市や町の近く(約50km以内)で起きれば大きな被害が出るおそれがある。また、地震が発生する時間や時期などによっても被害は異なる。
世界では、1年間にM5以上の地震が平均約1,500回、M2以上の地震が平均145万回発生している。数の上では、世界で発生する地震の1割程度が日本付近で発生しているといわれ、また1996年から2005年の期間では世界で発生したM6以上の地震の2割が日本で発生しているとの統計があり[3]、客観的に見ても日本は地震の多い国と考えられる。地震の発生の頻度が過去と比べて増加したかどうかということは、局地的に見ることはできても、全世界的に見ることは現状では難しい。地震の発生数のデータは、地震計の精度の向上や観測点のネットワークの状況などに左右される。世界的に見ても目が細かい日本の高感度地震観測網でも1990年代後半以降のデータであり、世界を見ても微小地震・極微小地震を捉えられるような観測網は少なく、海底となればその傾向は顕著である。

防災上、地震を引き起こす可能性の高い活断層の存在は注目される。日本では主要な数百の活断層の位置と再来間隔や規模などが調査・発表されている。活断層と同様に活褶曲も地震を発生させうるほか、活断層が無い地域に新たに断層が発生する可能性も否定できない。そのため、活断層の調査を中心とした地震防災に対する批判も存在している。地球上の活断層(地溝・海溝などを含む)のうち、主なものを挙げる。これらは周期的に大地震を発生させると考えられている。このほか、地震活動が活発で多くの活断層を擁する歪集中帯と呼ばれる地域がある。プレートや地表の動きが数百年程度の間、長期的に見て一定であれば、それぞれのプレートの境界や断層で起こる地震は一定の周期で起こると考えられており、ひずみの蓄積と解放というサイクルを繰り返す。実際に、プレートの境界で起こる南海地震東南海地震東海地震宮城県沖地震などでは周期性があるとされているほか、北アナトリア断層の諸地震などでも周期性が確認されている。周期性のある地震は、一般的に固有地震といい、現在のところマグニチュード4程度以上、再来周期数年以上の地震で発見されている。過去数十年の地震であれば観測記録から分かるが、古い地震については津波堆積物の分析をしたり、古い文献を参考にしたりして推定している。

プレートの境界においては50年〜300年、断層においては数百年〜数十万年と、地震の周期はそれぞれ異なる。そのため、周囲のプレートの境界や断層でのひずみの影響を受け、それぞれのサイクルで、ひずみのかかり具合が毎回異なり、地震の周期が多少ずれることも考えられる。このずれの推定は、現在の長期的地震予知における大きな課題の1つとなっている。