地震は、地球表面の地殻の内部で

固く密着している岩盤同士が、断層と呼ばれる破壊面を境目にして、急激にずれ動くこと。これによって地震動と呼ばれる大きな地面の振動が引き起こされ、一般的にはこちらも「地震」と呼ぶ。地質現象(地質活動)の一種。地震に対して、地殻が非常にゆっくりとずれ動く現象を地殻変動と呼ぶ。地震を対象とした学問を地震学という。地震学は地球物理学の一分野であり、構造地質学とも密接に関わっている。地震は、断層と呼ばれる地下の岩盤のずれが生じることで発生する。断層のずれによって生じた振動は、地面を媒質とした波(地震波)となって地中を伝わり、人間が生活している地表でも振動(地震動)が引き起こされる。 断層はふつう、地下数km〜数十kmの深さにあり、地震によって生じた伸縮の歪みは地下で完結し、地表までは達しないことが多い。しかし、大きな地震の時には地表地震断層とよばれる段差が地表にも現れることがある。地下で断層が動いた時、最初に動いた地点(地震波の発生源)を震源と呼び、地上における震源の真上の地点を震央と呼ぶ。 テレビや新聞などで一般的に使用される震源図は震央の位置を示している。一度の地震では、震源だけではなく震源の周囲数m〜数百kmの地盤で ずれが発生する。このずれの範囲を震源域と呼ぶ。

地震波には、地中を伝わる「実体波」(P波・S波)と、地表を伝わる「表面波」(レイリー波・ラブ波)がある。被害を引き起こすような揺れのもとは主にS波である。P波とS波は伝搬速度が異なるので、これを応用して震央距離を求めることができ、3以上の観測点があれば震源の深さと距離も求めることができる。この式は大森房吉が1899年に発表したので、「震源の大森公式」と呼ばれている。
ある程度の規模を超える地震は、地震活動に時間的・空間的なまとまりがあり、その中で最も規模が大きな地震を本震と呼ぶ。ただし、本震の区別が容易でない地震もあり、断層のずれの程度や前後に起こる地震の経過、断層の過去の活動などを考慮して判断される。他に前震・余震を伴うことがある。本震の前に起こるものが前震、後に起こるものが余震である。被害をもたらすような大地震ではほぼ例外なく余震が発生し、余震により被害が拡大する例も多い。余震の発生する範囲は、震源域とほぼ重なる。また傾向として、規模が大きな地震であるほど、本震の後に起こる余震の回数・規模が大きくなる。この余震の経過を示す法則には、「余震の大森公式」を改良したものがある。

地震の大きさを表現する指標は主に2つある。マグニチュード (M) は地震が持つエネルギーの量を表す指標で、震度階級(日本では震度)は地表の各地点での揺れ(地震動)の大きさを表す指標である。Mは地震ごとに毎回1つの値が出るが、震度は観測点ごとに出るため毎回多数出る。「震度○の地震」という場合の震度は、その地震により各地で観測されたものの中で最大の震度のことである。
大きな地震はしばしば建造物を破壊して家財を散乱させ、火災、土砂災害などを引き起こす。典型的な自然災害の1つである。気象災害や噴火等と異なり科学的な予報・予知が確立されておらず、前触れもなく突然やってくるので、建造物の強度を増したり震災時の生活物資を備蓄したりすることで「いつ来てもいいように」備えるのが一般的である。また、海域で発生する大規模な地震津波を発生させ、震源から離れたところにも災害をもたらすことがある。そのため、学術的な研究目的に加えて、津波の発生を速報する目的で、各国の行政機関や大学等によって地震の発生状況が日々監視されている。2004年のスマトラ島沖地震以降は、津波の警報態勢も大きく強化されている。

どの地殻構造で起こるかにより地震は3種類に分けられる(後述)。また、断層のずれる方向や向きなどのパターン、空間的なまとまり、時間的なまとまりからも、地震は特徴付けられる。被害をもたらすような大きな地震の多くは、既に存在する断層が数十万年から数十年に1回の活動周期を迎えた時に発生する、周期的な固有地震であると考えられている(固有地震説)。
地球の表層はプレートと呼ばれる硬い板のような岩盤でできており、そのプレートは移動し、プレート同士で押し合いを続けている。そのため、プレート内部やプレート間の境界部には、力が加わり歪みが蓄積している。これら岩盤内では、岩盤の密度が低くもろい、温度(粘性)が高い、大きな摩擦力が掛かっているなどの理由で歪みが溜まりやすい部分がある。ここで応力が局所的に高まり、岩体(岩盤)の剪断破壊強度を超えて、断層が生じあるいは既存の断層が動くことが地震であると考えられている。断層はいわば過去の地震で生じた古傷であり、地殻に対する応力が集中しやすいことから、断層では繰り返し同じような周期(再来間隔)で地震が発生する。断層の大きさは数百mから数千kmまであり、またその断層の再来間隔も数年〜数十万年とさまざまである。断層の中でも、数億年〜数百万年前まで動いていて現在は動いていないような断層があり、そのようなものは古断層といって地震を起こさない。一方、現在も動いている断層を活断層という。日本だけでも約2,000の活断層がある[2]。ただし、活動の有無を判別するのが難しい断層もあり、古断層といわれていた断層が動いて地震を起こした例もあるため、防災上注意しなければならない。

岩盤内で蓄積される応力は、押し合う力だけではなく、引っ張り合う力や、すれ違う力など様々な向きのものが存在し、それによって断層のずれる方向が変わる。押し合う応力は断層面の上側が盛り上がる逆断層、引っ張り合う応力は断層面の下側が盛り上がる正断層、すれ違う応力はほぼ垂直な断層面の両側が互い違いに動く横ずれ断層を形成する。