震源は、地震(岩石の破壊)の発生した

地下の場所を意味する。震央(後述)とは異なる。岩石の破壊は震源となる場所一か所で起こるものではないので、岩石の破壊が最初に発生した場所を震源と言い、岩石が破壊した領域を震源域(しんげんいき、hypocentral region、focal region)と呼ぶ。震源域はその規模によって大きく異なり、場合によっては数百kmにおよぶこともある。地震学においては、震源域と断層面はほぼ同義である。
小規模な地震では震源域が極めて小さく、岩石破壊が震源に集中している場合も多い(ポイントソース)。逆に大規模な地震では震源域が広い。よくある誤解として、例えば兵庫県南部地震震源が淡路島であったことから、“淡路島で発生した地震で、やや離れた神戸に被害が大きかった”と考えてしまうことがあるが、この場合も“岩石の破壊が最初に発生した場所”である震源が淡路島であるにすぎない。実際に岩石の破壊した領域、すなわち震源域は神戸市の直下まで伸びていることが、余震分布などから明らかになっている。

このように岩石が場合によっては数百kmにわたり破壊される地震という現象の中で、単に岩石の破壊が始まった点にすぎない震源が重視されるのは、震源のみが後述のように地震波の到達時刻をもとに、地震発生直後に判定できるからである。地震の規模と断層の長さの関係の目安を示す。岩石の破壊の始まった震源の位置は、地上の複数(3または4点以上)の観測点で得られた地震波形から、P波とS波の初動到達時刻を読み取り、決定する(グリッドサーチ法)。平面座標(緯度・経度)及び深さによって示される。気象庁では緊急地震速報を発表するために、1つの観測点で得られた波形だけから震源を一時的に推定することもある(BΔ法、テリトリー法)。当然、多くの波形が得られていたほうが震源の決定精度は高い。しかしグリッドサーチ法でも震源の深さを求めることは難しい場合があり、余震活動や、震源から数千km離れた観測点の波形を用いることで決定される。
実際には、岩石の破壊は震源にとどまらず、大地震の場合は数十km以上にわたって破壊が広がるわけであるが、その様子については地震波形からは明らかにすることはできない。それは真っ暗なトンネルの中でたくさんの鐘を鳴らすようなものである。この場合、最初に鳴りはじめた鐘がどの方向にあるかは辛うじて分かるものの、一斉に鳴り、さらに壁の音の反響もあると、もはやそれぞれの鐘の配置など分からない。地震波もそれと同様で、最初の1点については判定できるものの、その後どうなっているかは直接は分からない。故に地震のその他のパラメーターと震源域は、以下のように様々な分析と、震源域でその後に発生する余震の分布をもとに判定される。

地震は地下の断層運動と考えられるから、地震を起こすことによってどれだけ断層が動いたかを示せば、地震の発生メカニズムを示すことになる。これを震源パラメータと呼ぶ。震源パラメータも観測される地震波形から求められる。まず地震波の初動が「押し」であるか「引き」であるかを識別してこれを図に描き、震源球を作る。これは整理されてメカニズム解として表される。すなわち、断層の走向(strike)、傾斜(dip)、すべり方向(slip vector)である。このメカニズム解と、観測された地震波形の振幅から、断層がどれだけ動いたか(すべり量)を決定する。このほか、震源パラメータとして重要な断層面の面積は、余震分布、地震後の地殻変動である余効変動、地震波の周波数の解析、津波などから求められる。震源直上の地表部分を震央(epicenter)と呼び、これには深さのパラメータはない。マスコミなどで俗に震源地と言われているものである。震源の深さの決定は難しいが、震央は比較的簡単に求められる。震央が海上にあった場合、津波の危険があるため津波警報発令等の対策を取るなど、まず震央を求めることが重要になる場合もある。震源という言葉は、ものごと(とくに事件や騒動)の原因や渦中という意味で使われることがある。震央という言葉をなにかのたとえに使うことはほとんどない。