「極めて近き時代まで地殻運動を

繰り返した断層であり、今後もなお活動するべき可能性のある断層」を特に活断層(かつだんそう、active fault)という[1]。ここでいう「極めて近き時代」とは新生代第四紀を指す。狭義には、「過去数十万年」を指す場合もあるが、これは多くの場合、活断層の認定が断層の変位基準となる地形の形成年代に深く関わることから設定された便宜的なものであって、その曖昧さが指摘されている[2]。別の定義によれば、「現在の応力場の下で地震を起こし得る断層のうちで、断層面が地表まで達しているもの(地表断層)に限る。ただし、伏在断層であっても断層面の上端が地表近く(およそ1km以下の深度)まで達しているものは、何らかの方法で最近の地質時代における活動を確認することができる。したがって、この種の浅部伏在断層は活断層の範疇に含める。」とされる[3]。活断層では地震が過去に繰り返し発生しており、また今後も地震が発生すると考えられているため、活断層の活動度の評価は、そこを震源として発生する地震の予知に役立つと考えられている。

活断層の調査は、空中写真の判読、地形分類図の作成、現地での測量や地形観察、地表踏査、トレンチ調査、弾性波探査、ボーリング調査、広域テフラの同定(鍵層)や放射年代測定(特に放射性炭素年代測定)などの方法によって行われる。調査の結果判明した活動時期及び変位量を基に、平均変位速度、地震の発生間隔、活動度(AA級からC級まで)の評価を行う。活断層は長期間連続的に動き続けるのではない。一部の例外を除いて、ある一定の周期で瞬間的に動き、他の期間はあまり目立った活動をしないものが多い。活動周期と1回に動く大きさは、断層によって異なるが、概して、海洋プレート沈み込み地帯やトランスフォーム断層では100年前後、内陸の断層では数百年〜数十万年程度の活動周期を示す。ただし、ごく稀に、常時ずるずると滑りつづけ(「安定すべり」という)、大きな地震を起こさない活断層もある。これはクリープ断層と呼ばれ、サンアンドレアス断層の一部などがそうである。

日本の活断層
プレートテクトニクスによれば、日本列島は、関東・東北地方の沖の日本海溝で太平洋プレートが北アメリカプレートの下に沈み込む際に東西方向の強い圧縮力を受けている。東北から近畿にかけての断層の多くは、この応力を受けて生成された逆断層や横ずれ断層である。逆断層は南北方向のものが多く、山々を隆起させる。火山以外の山地の多くは逆断層によって形成されたものである。横ずれ断層は東北-西南方向と西北-東南方向の2方向に向くものが多い。ほとんどの断層は横にずれると同時に上下にも動いている(斜めずれ)。また南海トラフではフィリピン海プレートユーラシアプレートの下に沈み込んでいるが、東端の伊豆半島付近を除けば太平洋プレートの沈み込みほどには顕著な断層系を発達させていないと見られている。また日本の中では例外的に、九州中部の別府から島原にかけての地域では南北方向に引っ張られる応力が働いていることが知られており、正断層が多く見られる。これは沖縄トラフの延長とする説もある。

日本においては、1980年に『日本の活断層 - 分布と資料』(活断層研究会編、東京大学出版会)が刊行され、その後、1995年の兵庫県南部地震を契機として、各地で活断層調査が実施された。その結果は、国土地理院による『縮尺2.5万分の1都市圏活断層図』(2007年現在で133面刊行)や、産業技術総合研究所活断層研究センターによる『活断層ストリップマップ』などにまとめられ、近年刊行されている地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)にも反映されている[4]。また、活断層データベースには、日本の主な活断層の平均変位速度などのパラメータや、それらの算出根拠となった調査データがまとめられている。

断層の内部構造
断層は活断層か否かにかかわらず破砕帯(はさいたい)などの内部構造を持つことが多い。
トンネル工事で大量出水事故の原因となる地質構造。断層は岩盤が割れてずれ動くものであるから、断層面周辺の岩盤は大きな力で破砕され、岩石の破片の間に隙間の多い状態となっている。これが断層破砕帯で、砕かれた岩石破片の隙間に大量の水を含み、また地下水の通り道となっている。掘削中のトンネルがこの場所に当たると大量の水が噴出して工事を著しく妨げる。破砕帯の幅は断層によって異なり、数十mに達する場合もある。黒部ダム建設の資材運搬用トンネルである関電トンネル建設工事は、総延長80mにも達する大破砕帯に遭遇した事で困難を極め、一時は工事の中止も検討された。また、破砕帯の存在を広く一般に認知させた。日本では蓬莱峡などで地表に自然露出した断層破砕帯を見る事ができる。断層粘土 [編集]断層破砕帯の破砕が進むと、岩石の破片が粉砕され粘土のような細粒物質で充填された状態となる。こうなると却って水を通しにくくなり、地下水の流れがここでせき止められて地下ダムのような役割を果たすことがある。トンネル工事中にこのような断層粘土帯を掘り抜いた途端に大量の出水に遭遇することがあり、大変危険である(例:丹那トンネル・関電トンネル・六甲トンネル)。マイロナイト [編集]断層の深部では温度が高いため、破砕されずに塑性変形を起こしてマイロナイトと呼ばれる特徴的な変形構造を持つ岩石となる。昔の断層深部にあったマイロナイトが隆起・侵食によって現在では地表で観察できる場所もある。